胃潰瘍とは?

胃潰瘍とは、簡単に説明すると何らかの原因により胃粘膜組織が欠損した状態をいいます。

どんな症状?

症状としては、空腹時や夜間の心窩部痛といった症状が主症状ですが、腹部膨満感、嘔気、嘔吐などがでる場合もあります。また、潰瘍部からの出血により、貧血、血圧低下、頻脈、タール便(真っ黒い色の便)などの症状が出現する場合もあります。

原因は?

原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori、以下H. pylori)による感染、非ステロイド性の消炎鎮痛薬(NSAID)などの薬剤、血流障害、ストレスなどが上げられます。

診断の方法は?

胃潰瘍の診断は、上部消化管内視鏡検査や上部消化管X線造影検査で診断を行います。

胃潰瘍をもう少し詳しく

胃潰瘍は、主に、H. pyloriによる感染が約70%を占め、約30%がNSAID起因と考えられています。その為、成因診断は治療を考えるうえで必須条件です。H.
pylori感染の有無を調べるには、内視鏡検査による組織生検を用いる方法や13C尿素呼気テスト、血清中あるいは尿中H. pylori IgG抗体測定、便中H. pylori抗原測定などがあります。また、NSAID起因性の潰瘍を診断するためには、服用している薬の事を医師に話すことが重要です。NSAIDや過度のストレスにより急性の胃潰瘍を発症し、上腹部痛、吐き気、嘔吐を繰り返し、時には吐血、下血などを来す場合や、急性胃粘膜病変(AGML)といった疾患を引き起こすこともあります。これら以外の原因で発症する潰瘍には、クローン病や腫瘍性(癌等)によるものがあります。

胃潰瘍の病期は治癒過程に従って活動期(A1, A2)、治癒期(H1, H2)、瘢痕期(S1, S2)に分類され、粘膜組織欠損の深さによりUlⅠ~UlⅣに分類されます。UlⅠは粘膜層の欠損、UlⅡは粘膜下層までの浅い潰瘍、UlⅢは固有筋層、Ⅳは固有筋層を穿通し、漿膜に達する深い潰瘍をいいます。尚、正式にはUlⅠはびらん、UlⅡ~Ⅳを潰瘍と分類します。

胃潰瘍の合併症で出血、狭窄などを引き起こすこともありますが、内視鏡的止血術や優れた抗潰瘍薬の出現、医療管理の充実などにより、最近では外科的手術を行うことは少なくなってきています。しかし、穿孔などを引き起こした場合には、低侵襲性である大網充填術や腹腔鏡下の手術を行うこともあります。

治療法

胃潰瘍の治療は、その成因により異なります。H. pyloriの場合は除菌を行って潰瘍治療を行い、NSAID潰瘍の場合はその薬剤を中止するなどの原因除去をした上で潰瘍の治療を行います。しかし、重篤な肝障害や腎障害がある場合には、除菌治療ができない場合もあります。また、NSAID潰瘍と診断されても、やむを得ずその薬剤を中止することが出来ない場合もあります。その場合にはNSAIDの胃に対しての副作用を軽減する薬を追加投与し、潰瘍治療を行います。その他にも様々な要因がありすぐに原因除去を行えない場合もありますので、治療法は多種多様に行わなければなりません。現在はすぐれた抗潰瘍薬が開発され、内視鏡による治療や技術も向上しています。医師を信頼し、医師に納得のいくまで治療法を説明してもらい、医師の指示通りに治療を開始して下さい。

文献

  1. 医学大辞典、南山堂、東京、19版、p94
  2. 今日の治療指針2007、医学書院、東京、Vol.49、p328-330
  3. 今日の診断指針、医学書院、東京、5版、p703-706

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このページの原稿&資料提供は 三友堂病院消化器内科