肺ってどんな器官?

呼吸器の主部をつかさどる肺は、縦隔をはさんで左右にわかれ、左肺は心臓が左方によっていることにより、右肺より若干小さくなっている。大きさは右肺が1,200ml、比重が600gあり、左肺は1,000ml、比重が500gである。また、右肺には3条、左肺には2条の深い切れ込みがあり、それぞれ右側は上葉、中葉、下葉の3葉に区分され、左側は上葉、下葉に区分されている。それぞれの肺葉の表面は径約1cmの多角形の小区画にわかれており、これを肺小葉という。各小葉間は不完全ではあるが線維性結合組織の縦隔で区切られている。また、肺門に入った気管支は葉気管支に分かれ、さらに右10本、左8本の区域気管支に枝分かれしている。各区域気管支の枝が分布する範囲が一つの肺区域である。肺区域はさらに多数の肺小葉に分割され、その先は無数の肺胞に分かれている。その肺胞の壁にある毛細血管網内の血液中の二酸化炭素と鼻や口を通し気管支から送られて肺胞内に入った酸素とのガス交換が行われ、新鮮な血液となって全身に送られていく。両肺の肺胞の総数は約7~8億あり、総表面積は90m2におよぶという。

肺気腫ってどんな病気?

肺気腫とは、終末細気管支より末梢の気腔が異常に拡大し、肺胞壁の破壊を伴うが明らかな線維化は認められない病態で、形態学的診断名である。その中でも肺気腫と慢性気管支炎が様々に組み合わさり、非可逆性の閉塞性換気障害を特徴とする病態を慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼んでいる。

どんな症状?

呼吸困難、息切れが代表的な症状で、特に、労作時の口すぼめ呼吸は肺気腫患者に多く見られる。

原因は?

主に加齢、喫煙、大気汚染などの多くの要因が複雑に関与していると考えられている。また、α1-アンチトリプシン欠損症が病因となる場合もあるが、我が国での頻度は低くなっている。
肺に炎症が生じると、好中球やタンパク分解酵素が増加し、肺組織が障害を受けて肺気腫になるともいわれている。

診断の方法は?

中・高年で喫煙歴があり、労作時呼吸困難を訴える場合に疑い、肺機能検査や胸部X線写真で他の心肺疾患を除外する。また、胸部CTなどの検査も有用である。

治療法は?

まず第一に禁煙を行い、排気ガス・有機粉塵などを回避するのが基本である。症状が安定している場合は、肺機能検査や画像診断などの定期的な外来経過観察でよい。肺機能検査などで症状をステージ1(軽症)~ステージ4(最重症)に分類し、軽症の場合は症状がある時のみの短時間作用型の気管支拡張薬などを使用する。また、ステージ2からは呼吸リハビリテーションや長期作用型の気管支拡張薬を使用し、重症になるごとに吸入ステロイド薬、酸素療法、外科療法などを行うこともある。

文献

  1. 医学大辞典、南山堂、東京、19版、p1939, p1946
  2. 今日の治療指針2007、医学書院、東京、Vol.209~211
  3. 今日の診断指針、医学書院、東京、5版、p922~923

関連サイト

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このページの原稿&資料提供は 三友堂病院呼吸器内科