4-2 緩和ケア外来および在宅療養支援

5-3 緩和ケア外来および在宅療養支援

初めて緩和ケア外来を受診した患者さんや付き添いのご家族に「受診の目的」を問うと、戸惑いの表情で“なんだかわからないが、三友堂病院の緩和ケア外来に行けと言われたので来た”と返答されることが常であります。時には“もう治療はない、あとは緩和しかない”と追い出されるように前医に言われ、恐る恐る受診した患者さんもいます。そのため、「緩和ケア外来とは、悪性腫瘍と後天性免疫不全症候群の患者さんを対象に、苦痛症状を緩和する医療を行なっているところ」という説明からはじめなければなりません。したがって、患者さんが病名を知っている(病名告知がなされている)ことが必須になります。しかし、“高齢者はすべて認知症で病気について説明しても理解できない”と決めつけられていたり、ご家族の反対で病名や病状を知らされていなかったりする患者さんも少なくありません。そこで緩和ケア外来では「嘘のない会話をしてよいか」という確認から始めます。これに戸惑うのは付添者の方で、高齢の患者さんでもほとんどが「自分のことだから本当のことをわかるように説明してほしい。今までの説明はよくわからなかった」と回答します。正確な病名や病状の説明を“ご家族ではなく患者さん本人にする”ことが一般化しなければ、「緩和ケアを必要とするすべての患者」に提供することが困難になります。自分の病気や病状を知りたくない患者さんもいるでしょう。しかしこれまでの経験では、ほぼ全員が本当のことを知りたがっています。高齢の患者さんも、難しい病気の説明は理解できなくとも、治るのか治らないのかを知りたがっています。治らない場合の覚悟や人生の締めくくりの準備があるからです。具合が悪くなった高齢のがんの患者さんは、回復するのは無理だと感づいているので、治らないという説明を淡々と受け入れます。苦痛症状をコントロールすることと保証することによって、病気が治らないことに対する不満は解消し感謝されることさえあります。

 緩和ケア外来では,以下の説明を必ず行っています。

1.入棟審査と緩和ケア病棟の役割について

治すことができないがんの患者さんでは、必ず病状は進行しやがて苦痛症状が出現します。強い痛みは入院しなくともモルヒネの内服でほぼコントロールできますが、全身倦怠感や呼吸困難感が出現すると在宅療養に不安を抱く患者さんが多くなります。そのような場合には「いつでも緩和ケア病棟を利用できる」と伝えます。ただし、「緩和ケア病棟入棟審査会」で承認された患者さんだけが入院できるので、早めに申請しておくことを勧めています。申請にあたって、「緩和ケア病棟入院中は、手術療法・化学療法・放射線療法などのがん疾患に対する治癒を目的とした治療は行わない」ことに同意してもらいます。これは、緩和ケアを始めたら手術や化学療法、放射線療法ができなくなるということではありません。苦痛症状があるときに手術や抗がん剤などのがん治療を行うことは、患者さんにとって大きな負担になります。緩和ケア病棟に短期間入院して症状を緩和し、退院してからがん治療に再挑戦してもらいます。緩和ケアを末期になってから始めるのではなく早期からがん治療と並行して行うことが広がれば、こうした“緩和ケア病棟の利用法”も増えてくると思われます。

2.在宅緩和ケアと訪問診療

 治らない病気になったとき、在宅療養は無理とあきらめている患者さんが多くいます。経験がないための不安と、介護のことで家族に迷惑をかけたくないとの思いからです。各地域には在宅緩和ケアを支える訪問看護ステーションがあり、看護師が患者宅を訪問して緩和ケアを行っています。そうした看護や介護の地域支援体制を知らない場合が少なくありません。当外来で訪問看護サービスや訪問診療についての情報提供を受けて、安心する患者さん・ご家族は多いのです。当院でも在宅緩和ケア支援を進めており、在宅看取り数が増えています。それまで年に数例にすぎなかった在宅看取り数は、2012年度25人、2013年度には38人となりました。そのなかには、緩和ケア外来の段階で在宅療養の準備をし、緩和ケア病棟に一度も入院することなく、かかりつけ医や当科の医師による訪問診療で看取った患者さんもいます。今後は一人暮らしや老人ホームの患者さんに対しても、それまで生活していた場所で最期を迎えられるための支援をしていく必要があります。


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3.緩和ケア病棟に入院するときは救急車を利用しない

 緩和ケア外来を受診している患者さんはすべて、がんと共存しています。在宅療養中は常に病状の変化を予測しながら、早めの対応が大切です。しかし予測していない事態が発生し、救急車で搬送される場合もあります。そのような時には、原因究明のための検査が必要であり、結果によって入院する病棟を考える必要があります。緩和ケア病棟に入院する時には、救急車ではなく一般車を利用するように勧めています。救急車が必要な状態にならないうちに、早めに対応するように伝えています。