[泌尿器疾患]前立腺癌の診断と治療

2010年3月14日

三友堂病院 泌尿器科  前科長 髙木 敏男

 前立腺癌は近年増加傾向です。1998年には前立腺癌の年齢調査罹患率は胃癌・肺癌・結腸癌・肝臓癌・直腸癌に次いで6番目に多かったが、2020年には肺癌に次いで2番目になると予測されています。但し、ITの進歩に伴い多岐にわたる治療法が開発されており早期発見・早期治療によって治療成績も向上している。ここでは、前立腺癌の診断と様々な治療法に関して紹介します。

 前立腺は膀胱尾側に有り尿道を取り囲むように存在し、中心領域・移行領域・辺縁領域・前葉線維筋性間質に分類される。その中でも癌が発生しやすい部分は辺縁領域(約80%)です。前立腺癌の原因としてはっきりしているのは年齢・人種・家族歴です。50歳以上の剖検例で30%に、80歳以上の剖検例では60~70%に微小な前立腺癌を認めることから年齢の因子ははっきりしている。人種でいうと黒人・欧米人に多くアジア人に少ない。家族歴では、第一度近親者に一人前立腺癌患者がいる場合にはそうでない場合の2倍の危険度、二人以上いる場合には5-11倍の危険度がある。その他にも動物性脂肪などの食事性因子が危険因子として疑われています。

前立腺の構造と働き

 さて、実際の前立腺癌の診断ですが、まずスクリーニング検査にて癌の疑いがあるか判断します。PSA(前立腺特異抗原)・直腸診・経直腸的前立腺超音波がそれである。PSAは前立腺内に存在するたんぱく質であり通常は前立腺内に留まっているが、上皮細胞が破壊されると血液中に流出し採血にて検出される。前立腺肥大症や前立腺炎・膀胱鏡などの前立腺刺激によっても上昇するが、最も危険なのは前立腺癌であることは言うまでもありません。また、直腸診も非常に大切なスクリーニング検査です。前立腺表面が不整であったり著しく硬い場合は癌を疑います。

三友堂病院におけるPSA階層別

 実際、スクリーニング検査にて癌が疑われた場合には前立腺生検を行います。当院では直腸から超音波を挿入して前立腺の組織を10本程度採取します。三友堂病院では2005年1月から2007年9月まで119例に前立腺生検を施行し73例に(61%)前立腺癌を認めています。この高い検出率は年齢やPSA上昇度などで症例を絞っているためと考えられます。実際に癌と診断された場合には、CTやMRI・骨シンチにて病期診断を行います。限局性前立腺癌(stage AB)の場合には、手術・放射線(外照射、小線源密封療法、重粒子線)・ホルモン療法・待機療法などがあります。

前立腺生検

 それぞれに長短所があるため年齢・合併症・居住地域などでその適応は考慮すべきと考えます。当院では平成19年度は限局性前立腺癌の17名に対して前立腺全摘除術(手術)を施行しております。放射線治療は当院では施設が無いためご希望の病院に紹介させて頂いています。Stage Cでは、ホルモン併用放射線療法やホルモン単独療法・手術療法が選択されるがこの場合も適応はそれぞれの患者さんの背景を考慮すべきと考えます。Stage D(転移性)に対しては、多くはホルモン療法をお勧めしています。
 以上簡単に前立腺癌の診断と治療に関して述べさせていただきました。前立腺癌は早期発見であれば治療法の選択肢は広がっています。前立腺癌は治療を開始してからの経過が長い疾患です。患者さんと正確な情報を共有して治療を継続していく必要があると考えています。

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原稿&資料提供  三友堂病院泌尿器科